#10: 高度なプロンプト技術(思考の連鎖)
AIに「直感」ではなく「論理」で答えさせる技術
📊 難易度: 中級
🎯 学習スキル: Chain of Thought (CoT)、Few-Shot、推論力強化
導入
これまでは「AIにどう指示するか(How)」を学んできました。Week 10では、「AIをどう考えさせるか(Thinking)」を学びます。
AIは放っておくと、確率の高い言葉を繋げて「それっぽい答え」を即答しようとします(直感モード)。しかし、複雑なビジネス課題や計算問題では、これだと間違えます。AIに「ちょっと待って、順を追って考えて」と伝えることで、AIの脳を「論理モード」に切り替えることができます。
💡 この週で得られること
「ステップ・バイ・ステップで考えて」という魔法の言葉(CoT)と、例を見せて学ばせる技術(Few-Shot)を使い、AIから「天才的な推論」を引き出す対話術を習得します。
この章で登場する用語
📖 この章で登場する用語
学習内容:ライブ実演「AIの思考を修正せよ」
今回は座学よりも、実際の対話の流れ(ライブ感)を見て学ぶのが一番です。ある「ビジネス課題」に対して、プロンプトをどう進化させていくかを見ていきましょう。
あなたは新規事業担当者です。「東京駅の近くに小さなカフェを出店したら、1日の売上はいくらになるか?」をAIに見積もらせたいとします。正確なデータはありません。論理的な推論が必要です。
Step 1: 失敗例(いきなり答えを聞く)
まずは初心者がやりがちな、直球の質問です。
❌ 残念ポイント
「10万〜50万」という幅が広すぎて、ビジネスの判断に使えません。AIは適当な知識を検索して、それっぽい数字を答えただけです。これでは「使えない」と判断されてしまいます。
Step 2: 思考の連鎖(CoT)の発動
ここで魔法の言葉を使います。「ステップ・バイ・ステップで考えて(Think step by step)」です。これにより、AIはいきなり答えを出さず、計算式を組み立て始めます。
客席数、回転率、客単価などを仮定して、ステップ・バイ・ステップで計算式を立てて考えてみて。
AI: 承知いたしました。論理的に分解して試算します。
1. 前提条件の設定:
– 小さなカフェと仮定:席数 20席
– 営業時間:10時間(8:00-18:00)
2. 回転率の推定:
– 東京駅近くなため、テイクアウトも多いと仮定。
– 1時間あたり1回転すると仮定 = 10回転/日
3. 売上計算:
– 客数 = 20席 × 10回転 × 稼働率80% = 160人
– 客単価 = 800円(コーヒー+軽食)
– 売上 = 160人 × 800円 = 128,000円
✅ 改善ポイント
「12万8000円」という具体的な数字が出ました! しかも、「席数」や「回転率」という根拠が明示されているため、人間が後から「いや、席数はもっと多いな」と修正することができます。これが「使えるAI」です。
Step 3: さらに精度を高める(条件の追加)
Step 2で良い線まで行きましたが、まだ少し単純です。ここでWeek 3の「役割設定」とWeek 2の「構造化」を組み合わせて、プロレベルの回答を引き出します。
あなたは「辛口の経営コンサルタント」です。以下の条件(YAML)を加えて、より厳しく現実的な再計算を行ってください。Conditions:
– ランチタイム(12-13時)のみ満席、それ以外は稼働率30%
– テイクアウト比率: 30%
– 土日は定休日(平日のみ計算)
AI: 甘い見積もりを排除し、現実的な試算を行います。
1. 時間帯別売上:
– ランチ (1h): 20席 × 100%稼働 = 20人
– その他 (9h): 20席 × 30%稼働 × 9回転 = 54人
– イートイン計: 74人 × 800円 = 59,200円
2. テイクアウト加算:
– イートイン客の30%相当が追加で来店と仮定 = 約22人
– 単価 500円(ドリンクのみ) = 11,000円
結論:
1日の現実的な売上予測は 70,200円 です。
Step 2の試算(12.8万円)は約45%も楽観的すぎました。この数字では、家賃の高い東京駅前での黒字化は極めて困難です。テイクアウト強化等の戦略見直しを推奨します。
💡 結論
いかがでしょうか? 最初は「10〜50万円」という適当な答えでしたが、思考のプロセス(CoT)と条件を与えることで、「7万円、黒字化困難」という経営判断に使えるレベルの回答に進化しました。これが「高度なプロンプト技術」の正体です。
実践演習
それでは、皆さんも「思考の連鎖(CoT)」を使って、AIの推論能力を引き出してみましょう。
演習課題:複雑な問い合わせへの対応
顧客から「要領を得ない、長文の問い合わせメール」が来たとします。AIにいきなり返信を書かせず、一度「分析」させてから書かせることで、品質を高めます。
🤖 プロンプト例(Chain of Thought)
あなたはカスタマーサポートのプロです。
以下の[問い合わせメール]に対し、いきなり返信を書かず、以下のステップで思考してから、最適な返信文を作成してください。
# 思考ステップ
1. **感情分析**: 顧客は怒っているのか、困っているのか、焦っているのか?
2. **事実抽出**: 具体的に何が起きたのか、時系列で整理する。
3. **不足情報**: 解決のためにこちらから聞くべきことは何か?
4. **返信作成**: 上記を踏まえ、共感を示しつつ、必要な情報を聞き出す返信案を書く。
# 問い合わせメール
(ここに長文のメールを貼る)
「昨日商品が届いたんだけど、なんか箱が凹んでて、開けたら説明書が入ってなくて、使い方がわからないから電話したけど繋がらないし、来週の旅行で使いたいのにどうなってるの?」
まとめ
Week 10では、プロンプトエンジニアリングの奥義である「Chain of Thought(思考の連鎖)」を体験しました。
AIは優秀ですが、時にサボろうとします。人間が「順を追って考えて」「論拠を示して」とガイドすることで、AIは初めてその真価を発揮します。「答えを聞くのではなく、一緒に考える」。この感覚を忘れないでください。
✅ 明日から使える3つのポイント
- 計算や推論が必要な時は、必ず「ステップ・バイ・ステップで考えて」と指示する。
- 一度の回答で満足せず、「条件(前提)」を追加して対話で精度を高める。
- 複雑なタスクは、「まず分析→次に実行」と思考プロセスを分けさせる。
スキルチェックリスト
- ✅CoT(思考の連鎖)を使って、AIに論理的な推論をさせることができる
- ✅AIの回答に対して、条件を追加して修正させることができる
- ✅フェルミ推定のような、正解のない問題に対してAIと仮説を立てられる
成果物
- Chain of Thoughtを用いた推論プロンプトのログ
- AIとの対話によって精緻化されたビジネス試算(売上予測など)
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