#10: 高度なプロンプト技術(思考の連鎖)

#10: 高度なプロンプト技術(思考の連鎖)

AIに「直感」ではなく「論理」で答えさせる技術

⏱️ 学習時間: 180-240分
📊 難易度: 中級
🎯 学習スキル: Chain of Thought (CoT)、Few-Shot、推論力強化

導入

これまでは「AIにどう指示するか(How)」を学んできました。Week 10では、「AIをどう考えさせるか(Thinking)」を学びます。

AIは放っておくと、確率の高い言葉を繋げて「それっぽい答え」を即答しようとします(直感モード)。しかし、複雑なビジネス課題や計算問題では、これだと間違えます。AIに「ちょっと待って、順を追って考えて」と伝えることで、AIの脳を「論理モード」に切り替えることができます。

💡 この週で得られること

「ステップ・バイ・ステップで考えて」という魔法の言葉(CoT)と、例を見せて学ばせる技術(Few-Shot)を使い、AIから「天才的な推論」を引き出す対話術を習得します。

この章で登場する用語

📖 この章で登場する用語

Chain of Thought (CoT) 「思考の連鎖」。いきなり答えを出さず、「まず〜をして、次に〜をして」と手順を踏んで考えさせるプロンプト技術。
Zero-Shot / Few-Shot 例なしで聞くのがZero-Shot。いくつか例を見せてから聞くのがFew-Shot。後者の方が精度が高い。
ハルシネーション対策 AIの嘘を減らす技術。CoTを使うと、論理の飛躍が減るため、嘘をつきにくくなる効果があります。

学習内容:ライブ実演「AIの思考を修正せよ」

今回は座学よりも、実際の対話の流れ(ライブ感)を見て学ぶのが一番です。ある「ビジネス課題」に対して、プロンプトをどう進化させていくかを見ていきましょう。

📝 課題:カフェの売上予測(フェルミ推定)
あなたは新規事業担当者です。「東京駅の近くに小さなカフェを出店したら、1日の売上はいくらになるか?」をAIに見積もらせたいとします。正確なデータはありません。論理的な推論が必要です。

Step 1: 失敗例(いきなり答えを聞く)

まずは初心者がやりがちな、直球の質問です。

あなた: 東京駅近くのカフェの1日の売上を予測して。
AI: 東京駅周辺のカフェの売上は、立地や規模によりますが、一般的には1日あたり10万円から50万円程度と考えられます。多くの人が利用するため、高い売上が見込めます。

❌ 残念ポイント

「10万〜50万」という幅が広すぎて、ビジネスの判断に使えません。AIは適当な知識を検索して、それっぽい数字を答えただけです。これでは「使えない」と判断されてしまいます。

Step 2: 思考の連鎖(CoT)の発動

ここで魔法の言葉を使います。「ステップ・バイ・ステップで考えて(Think step by step)」です。これにより、AIはいきなり答えを出さず、計算式を組み立て始めます。

あなた: 答えを急がないで。論理的に推定したい。
客席数、回転率、客単価などを仮定して、ステップ・バイ・ステップで計算式を立てて考えてみて。

AI: 承知いたしました。論理的に分解して試算します。

1. 前提条件の設定:
– 小さなカフェと仮定:席数 20席
– 営業時間:10時間(8:00-18:00)

2. 回転率の推定:
– 東京駅近くなため、テイクアウトも多いと仮定。
– 1時間あたり1回転すると仮定 = 10回転/日

3. 売上計算:
– 客数 = 20席 × 10回転 × 稼働率80% = 160人
– 客単価 = 800円(コーヒー+軽食)
– 売上 = 160人 × 800円 = 128,000円

✅ 改善ポイント

「12万8000円」という具体的な数字が出ました! しかも、「席数」や「回転率」という根拠が明示されているため、人間が後から「いや、席数はもっと多いな」と修正することができます。これが「使えるAI」です。

Step 3: さらに精度を高める(条件の追加)

Step 2で良い線まで行きましたが、まだ少し単純です。ここでWeek 3の「役割設定」とWeek 2の「構造化」を組み合わせて、プロレベルの回答を引き出します。

あなた: 良いアプローチですが、ピークタイムとアイドルタイムの差が考慮されていません。
あなたは「辛口の経営コンサルタント」です。以下の条件(YAML)を加えて、より厳しく現実的な再計算を行ってください。Conditions:
– ランチタイム(12-13時)のみ満席、それ以外は稼働率30%
– テイクアウト比率: 30%
– 土日は定休日(平日のみ計算)

AI: 甘い見積もりを排除し、現実的な試算を行います。

1. 時間帯別売上:
ランチ (1h): 20席 × 100%稼働 = 20人
その他 (9h): 20席 × 30%稼働 × 9回転 = 54人
イートイン計: 74人 × 800円 = 59,200円

2. テイクアウト加算:
– イートイン客の30%相当が追加で来店と仮定 = 約22人
– 単価 500円(ドリンクのみ) = 11,000円

結論:
1日の現実的な売上予測は 70,200円 です。
Step 2の試算(12.8万円)は約45%も楽観的すぎました。この数字では、家賃の高い東京駅前での黒字化は極めて困難です。テイクアウト強化等の戦略見直しを推奨します。

💡 結論

いかがでしょうか? 最初は「10〜50万円」という適当な答えでしたが、思考のプロセス(CoT)と条件を与えることで、「7万円、黒字化困難」という経営判断に使えるレベルの回答に進化しました。これが「高度なプロンプト技術」の正体です。

実践演習

それでは、皆さんも「思考の連鎖(CoT)」を使って、AIの推論能力を引き出してみましょう。

演習課題:複雑な問い合わせへの対応

顧客から「要領を得ない、長文の問い合わせメール」が来たとします。AIにいきなり返信を書かせず、一度「分析」させてから書かせることで、品質を高めます。

🤖 プロンプト例(Chain of Thought)

あなたはカスタマーサポートのプロです。
以下の[問い合わせメール]に対し、いきなり返信を書かず、以下のステップで思考してから、最適な返信文を作成してください。

# 思考ステップ
1. **感情分析**: 顧客は怒っているのか、困っているのか、焦っているのか?
2. **事実抽出**: 具体的に何が起きたのか、時系列で整理する。
3. **不足情報**: 解決のためにこちらから聞くべきことは何か?
4. **返信作成**: 上記を踏まえ、共感を示しつつ、必要な情報を聞き出す返信案を書く。

# 問い合わせメール
(ここに長文のメールを貼る)
「昨日商品が届いたんだけど、なんか箱が凹んでて、開けたら説明書が入ってなくて、使い方がわからないから電話したけど繋がらないし、来週の旅行で使いたいのにどうなってるの?」

まとめ

Week 10では、プロンプトエンジニアリングの奥義である「Chain of Thought(思考の連鎖)」を体験しました。

AIは優秀ですが、時にサボろうとします。人間が「順を追って考えて」「論拠を示して」とガイドすることで、AIは初めてその真価を発揮します。「答えを聞くのではなく、一緒に考える」。この感覚を忘れないでください。

✅ 明日から使える3つのポイント

  • 計算や推論が必要な時は、必ず「ステップ・バイ・ステップで考えて」と指示する。
  • 一度の回答で満足せず、「条件(前提)」を追加して対話で精度を高める。
  • 複雑なタスクは、「まず分析→次に実行」と思考プロセスを分けさせる。

スキルチェックリスト

  • CoT(思考の連鎖)を使って、AIに論理的な推論をさせることができる
  • AIの回答に対して、条件を追加して修正させることができる
  • フェルミ推定のような、正解のない問題に対してAIと仮説を立てられる

成果物

  • Chain of Thoughtを用いた推論プロンプトのログ
  • AIとの対話によって精緻化されたビジネス試算(売上予測など)
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