#6: タスク思考②:業務フローの改善
今のやり方をAIで「速く」するな。AI前提で「新しく」作り直せ
📊 難易度: 中級
🎯 学習スキル: ボトルネック発見、As-Is / To-Be分析、プロセス再設計
導入
Week 5では、仕事を「部品(タスク)」に分解しました。Week 6では、その部品を組み立て直し、**「最もスムーズに流れるライン(業務フロー)」**を作ります。
多くの人が陥る罠は、「無駄な作業を、AIで速くしてしまうこと」です。不要な報告書をAIで爆速で作っても、それは「無駄の高速化」に過ぎません。
今の業務フローを疑い、ボトルネック(詰まり)を見つけ、AIを使って根本から流れを変える技術を学びましょう。
💡 この週で得られること
現状の業務フロー(As-Is)を可視化して問題点を特定し、AIに任せることを前提とした理想のフロー(To-Be)を設計できるようになります。
この章で登場する用語
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学習内容
1. 「可視化」なくして改善なし
業務改善に失敗する最大の理由は、現状(As-Is)を把握しないまま、新しいツール(AI)を入れようとするからです。「なんとなく忙しい」では改善できません。
まずは業務の流れを書き出し、どこで時間がかかっているかを「可視化」することから始めます。綺麗な図である必要はありません。箇条書きで十分です。
🔍 可視化の3つのチェックポイント
- 重複: 同じデータを何度も入力していないか?
- 停滞: 誰かのところでボールが止まっていないか?
- ムリ: 人手でやるには限界の作業量になっていないか?
2. ボトルネックをAIで「爆破」する
フロー全体の中で、最も時間を食っている場所がボトルネックです。AIは、このボトルネックを解消する強力な武器になります。
| よくあるボトルネック | AIによる解決策 |
|---|---|
| 「白紙」からの作成 (メール、企画書など) |
0→1を任せる 「たたき台」をAIに作らせ、人間は修正から始める。 |
| 情報の探索と整理 (リサーチ、要約) |
100→1を任せる 大量の資料をAIに読ませ、要点だけを抽出させる。 |
| 単純な変換作業 (手書き→データ、翻訳) |
変換を任せる マルチモーダル機能で一瞬でデジタル化する。 |
3. AI前提の「To-Beフロー」を描く
ボトルネックが見つかったら、そこをAIに置き換えた「理想のフロー(To-Be)」を設計します。
重要なのは、「人間が楽をする」ためではなく、「成果を最大化する」ためにフローを変えることです。空いた時間で何をするか(チェックの強化、顧客対応など)まで設計して初めて、BPRは完成します。
学習内容:ライブ実演「月次レポート業務の革命」
では、多くの企業で嫌われている「月次レポート作成」を題材に、業務フローを刷新するプロセスを見ていきましょう。
あなたは営業事務です。毎月、各部署から送られてくるExcelデータを集計し、グラフを作り、コメントを書いて役員に提出しています。これに毎月3日かかっており、ミスも多く、ストレスです。
Step 1: 失敗例(部分最適)
まずは、フローを見直さず、部分的にAIを使おうとして失敗するパターンです。
❌ 残念ポイント
「コメント作成」だけを楽にしようとしても、データがなければAIは動きません。結局、データの集計は手作業のままで、全体の時間はほとんど短縮されません。
Step 2: As-Is(現状)の可視化とボトルネック特定
急がば回れです。まずは今の業務手順を洗い出し、どこが問題なのかをAIと一緒に分析します。
私の「月次レポート業務」の現状(As-Is)を伝えます。ボトルネック(無駄)がどこにあるか指摘してください。[As-Isフロー]
1. 各部署からメールでExcelが届く
2. それを一つのファイルに手作業でコピペして統合する(半日かかる)
3. フォーマットがバラバラなので修正する(ミス多発)
4. グラフを作成し、それを見てコメントを書く
5. 上司に提出し、修正指示をもらう
ここに時間と精神力を使い果たし、肝心の「4. 分析・コメント」の質が落ちています。
また、「1. メール収集」もバラバラで非効率です。ここを自動化・標準化すべきです。
✅ 気づき
「コメント書き」が大変だと思っていましたが、真の原因は「データ収集と統合」にあることが分かりました。ここをAIで解決しない限り、楽にはなりません。
Step 3: To-Be(理想)フローの設計
ボトルネックを解消する新しいフローをAIに提案させます。ここでは、ChatGPTの「Advanced Data Analysis(データ分析機能)」などの活用を前提にします。
条件:Excelの統合やグラフ作成はAIに任せたい。人間は「最終チェック」と「考察」に集中したい。
AI: 承知いたしました。以下のTo-Beフローを提案します。
[To-Beフロー]
1. [標準化] 全部署共通の入力フォームを作成し、そこに記入してもらう(フォーマット統一)。
2. [AI実行] 集まったファイルをChatGPTに一括アップロード。「データを統合し、部署別売上推移のグラフを描画して」と指示。
3. [AI実行] 出力されたグラフを基に、「特筆すべき傾向を3点箇条書きにして」と分析下書きを指示。
4. [人間] AIが出したグラフと下書きを確認し、社内の事情(キャンペーン等)を加味して微修正。
効果予測: 作業時間は3日から半日(約80%削減)になります。
💡 結論
単なる「作業の代行」ではなく、「プロセスの再構築(入力方法から変える)」まで踏み込むのが、真のタスク思考です。AIは、そのための設計図を書いてくれる最高のパートナーです。
実践演習
それでは、あなたの業務で「面倒だ」「時間がかかる」と思っているフローを、AIと一緒に改善してみましょう。
演習課題:自分の業務フローのBPR
箇条書きで構いません。現状の業務手順を書き出し、AIに「無駄」を見つけさせてください。
🤖 プロンプト例(フロー改善)
あなたは業務プロセス改革(BPR)の専門家です。
以下の[現状フロー]を分析し、ボトルネックを特定した上で、AIを活用した[理想フロー]を提案してください。
# Context (背景)
– 業務名: [例: 顧客からの問い合わせ対応]
– 現状の課題: [例: 返信に時間がかかり、クレームになることがある]
# As-Is Flow (現状)
1. [メールを確認する]
2. [担当者にチャットで確認する]
3. [返事が来たらメールを書く]
4. …
# Role (役割)
AIツール(ChatGPTなど)の活用を前提に、工数を半分以下にする提案を行うコンサルタント
# Format (形式)
1. **ボトルネック特定**: どこが無駄か?
2. **To-Be Flow**: AIを組み込んだ新しい手順
3. **削減効果**: どれくらい楽になるかの試算
# Validation (検証基準)
– 現実的に実行可能な案であること
– 人間がやるべき「判断」の工程は残すこと
💡 実務での活用ヒント
AIの提案が「過激すぎる(全部自動化など)」場合は、「上司の承認プロセスは必須です」や「予算はゼロです」といった制約条件を追加して、再生成させてください。現実的なラインを探るのも大事な工程です。
まとめ
Week 6では、業務全体を俯瞰し、流れそのものを変える「フローの改善」を学びました。
- まず「可視化(As-Is)」する。書かないと改善できない。
- 「ボトルネック」を見つけ、そこをAIで解決する。
- 今のやり方を守るのではなく、AI前提の「理想(To-Be)」に作り変える。
これで、タスク思考(分解とフロー)の基礎は完了です。次回からは、いよいよ最後の思考法、未来から逆算して成果を定義する「ミッション思考」に入ります。
✅ 明日から使える3つのポイント
- 「忙しい」と思ったら、一度立ち止まって業務手順を書き出す。
- 「この作業、AIならどうやるか?」と常に問いかける。
- 改善案は、自分一人で悩まずAIに提案させる。
よくある質問
Q1: 業務フローを変えると、周りから反対されそうです。
A1: 最初は「自分一人で完結する業務」から始めましょう。そこで「これだけ楽になった」という実績(数字)を作ってから、チーム全体に提案するのがスムーズです。
Q2: 複雑すぎてフロー図が書けません。
A2: 完璧な図を目指す必要はありません。「箇条書き」で十分です。また、音声入力で「まずこれをして、次にこれをして…」と喋り、AIに「これをフロー図(Mermaid形式)にして」と頼む裏技もあります。
スキルチェックリスト
- ✅自分の業務フローを書き出し、ボトルネックを特定できる
- ✅As-Is(現状)とTo-Be(理想)の違いを説明できる
- ✅AIを使って、業務プロセス改善の提案書(草案)を作成できる
活用する基礎スキル
成果物
- 現状の業務フロー(As-Is)のメモ
- AIが設計した理想のフロー(To-Be)案
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